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『本湖月』さん。今月のおもてなしは端午の節句がテーマです。

お店の入り口にも飾ってあった邪気を払う菖蒲の葉と、健康のための蓬の葉で作られた兜のお飾りと共に出された品は、毛蟹とモズクと長薯にコシアブラを添えたもの。蕨粉独特の食感でまとめられた味わいを楽しみながら、皐月のストーリーが始まりました。
お料理にも使う蓬は、一枚一枚選りすぐって大将自らが摘んできた物だそうです。

続いての品は柏餅と粽。
柏の葉の下には穴子の飯蒸し、粽の中にはの鯛のお寿司が入っています。
金の蝶が控え目に描かれた黒漆のお椀の蓋を取ると、澄んだお出汁の香りと共に、白牡丹に見立てたアイナメと鮮やかな緑色のウスイエンドウ、そして言葉としては知っていましたが初めて口にする松露が目にも鮮やかに飛び込んできます。
食べ終わった後には季節感たっぷりの見事な細工が現れ、お椀一つだけでもお芝居を一幕楽しんだかのような感動がありました。

最初のお造りは、炙ったノドグロ。
口の中でとろける食感と旨さだけでも驚いたのですが、力強い文様と形、緑色の美しい器は楽家10代旦入の作品。東博か近代美術館にでもいる気分になります。
二皿目のお造りは、シーズンがスタートした淡路のウニとアオリイカ。
八寸は、ジュンサイに海藤花、一寸豆、タイの白子、鰻、海老、そして貝塚の筍を3年寝かせた鄙願のもろみと味噌に漬けたもの。もちろんお酒は鄙願を合わせます。
香ばしく焼かれた琵琶湖の稚鮎を楽しんでいると見過ごしそうになりますが、手の込んだ造りの笹皿は永楽でした。

余興と言うには勿体ない体験ですが、まるでお濃茶のようにビールを一つの器ので楽しませていただのは、大将が13年待って手に入れた魯山人の赤志野ビアジョッキでした。その存在感だけでなく、口当たりの何とも言えない優しさが、とても印象的でした。
すっかり有名になった花山椒鍋ですが、このお店では珍しい山形牛のヒレ肉は、とても丁寧にカットされ、山ウドの食感と香りも加わった味わい深い品となっています。

イタドリとニシン、南関揚げの炊き合わせの後は、いつもの通り輝く白御飯。
カツオのゴマだれとお漬け物がおかずですが、お代わりを止めるには、勇気と決断が必要です。

サクランボの水菓子は、いつもとは違って袴腰盆にのせられたローゼンタールのシャンパンクープに可愛らしく収まっています。
続いて丹波芋と小豆がつかわれた蓬のキントン。白樺の樹液を寒天で固めたものがキラキラと光り、蓬の苦味と緑に美しさと清らかな甘さが加わり、とても印象的でした。

いつものようにお薄をいただきコースは終了。
穴見さんの作り出す日本料理の素晴らしさに、ますますはまっています。

本湖月

本湖月

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